2016年11月2日水曜日

2016アメリカ旅行13 ヨセミテ国立公園4 滝・トレッキング


 翌朝、
 僕は、4時半に、ベッドから起き出し、
 
 5時前、
 まだ暗がりの中を、
 一人、ロッジを後にしました。
 
 この日は、
 もう、ヨセミテ最終日 ...
 (といっても、そもそも、2日間しかありませんが ^^; )
 
 次の目的地は、
 いよいよ、マウントシャスタ! なのですが、
 そこまでは、ここから、
 これまた、車で、7〜8時間ほどの、距離です。
 
 今夜は、シャスタ泊なので、
 夜までに、到着するには、
 少なくとも、昼食後には、
 ヨセミテを発たなければなりません。
 
 そこで、午前中は、
 トレッキングを、しっかりと満喫することにしていました。

 
 ニュージーランドで、
 ミルフォード・トラックやルートバーン・トラックなどの、
 世界に名だたるトレッキングコースを歩いたり、
 
 その他、トンガリロやスチュワート島などでも、
 山小屋に泊まったりしながら、ルートを踏破した体験などから、
 
 海外での、トレッキングが、
 その地の自然を堪能するのに、もってこいの方法の一つであることを、
 体感していました。
 
 そこで、
 アメリカ随一の「トレッカーの楽園」、ヨセミテでも、
 美しいルートを歩くことを、
 出発前から、何よりの楽しみにしていました。
 
 事前に調べてみると、
 トレッキングコースの各所で、
 素晴らしい光景が見られることが、
 写真とともに、紹介されていて、
 
 それらを目にした僕は、
  「これは、歩かねば!」
 と、心高ぶらせていました。
 
 しかしながら、
 子どもたちがいっしょでも、歩けるようなコースでは、
 その「内容」が、少々、残念なのです。
 
 せっかくの、雄大な、アメリカ大陸。
 その、随一の、トレッキング地。
 
  「少しでも、本格的なルートを歩きたい」
 そんな想いでした。
 
 どうしたものかと、
 思い悩んでいるとき、
 
 そんな、僕の想いを、裕子さんが、酌んでくれて、
  「子どもたちの面倒は、見るから、
   一人で、歩いてきていいよ」
 と、
 言ってくれていたのでした。
 
 ここまで、
  「早起きして、長距離移動」
 ということが、続いていたので、
 
 この日は、裕子さんと子どもたちは、
  「ゆっくり起きて、
   ゆっくり朝食をとって、
   そして、前日大喜びだった、川遊びをする」
 というプランになりました。
 
 おかげで、僕は、
 気兼ねなく、心置きなく、
 トレッキングをできることになりました。
 
 
 とはいえ、
 午後一には、ここを発たなければならないので、
 時間的には、5〜6時間のコースが、目一杯。
 
 「一日がかり」以上のコースは、
 諦めざるをえません。
 
 そこで、
 半日コースの一つ、
 
 マーセド川を、上流に遡(さかのぼ)り、
 ヴァーナル滝(Vernal Fall)とネヴァダ滝(Nevada Fall)を、
 上から眺め、そして、帰ってくる、
 
 " Vernal Fall and Nevada Fall Trails " を、
 歩くことにしました。
 
 ルートそのものは、
 距離 5.4マイル(8.7km)、
 高低差 2000フィート(610m)、
 時間は、往復で、ちょうど、5〜6時間のコースです。
 
 それに加え、
 泊まっていたロッジから、スタート地点までが、
 高低差無しの、約1km(往復2km)の距離でしたので、
 
 その時間に出れば、
 午前中には、確実に、ロッジに戻り、
 荷造り、荷物積みを済ませても、
 昼時には、昼食を食べられる算段でした。
 
 夏でも水量のある、マーセド川の流れが、
 それぞれ、97mと181 mの落差、降り降りる、
 二つの滝を、
 
 往きは、そのすぐ横を上って行き、
 ときに、水しぶきを浴びながら、
 その迫力を全身に感じ、
 
 上り切ったところでは、
 その滝口を、間近に覗き込み、
 落ち降りゆく流れを見つめ、
 
 帰りには、少し離れた所から、
 それぞれの滝の全景と、
 そのまわりの巨石群などを眺める、
 
 そんな、
 手軽ながら、ヨセミテをたっぷりと味わえる、
 僕にとっては、最適ともいえるルートでした。
 
 
 薄暗がりの中、歩きはじめたときには、
 まだ、空には、星が煌(きら)めいていましたが、
 
 でも、
 カメラには、はっきりとは、収まらないものの、
 すでに、肉眼では、ハーフドームが、しっかり捉えられていました。


 
 多くの人々が、いまだ、寝静まっている、
 規則的に並んだ、常設テントの横を、
 静かに、急ぎ足で、すり抜けるとき、
 
 なにか、自分が、「特別のこと」をしているかのように感じ、
 思わず、笑みがこぼれていました。
 
 静かな、人気のない、暗がりの道を、
 迷うこと無く、ルート入り口まで進んで、
 ようやく、人々と出会うようになりました。
 
 数は少ないものの、
  「涼しいうちに、人の少ないうちに、静かなうちに、
   このルートを、楽しみたい」
 という人々は、
 
 僕と、似た考えを持っているからなのか、
 出会っても、ただ、笑顔を交わすだけか、
 ただ一言、" Mornin' " と発するだけかで、
 
 黙々と、
 しかし、幸せそうに、歩いていて、
 
 自分の行動に、
 あるいは、周りの自然に、
 しっかりと、意識を合わせている風で、
 
 その人々の存在が、
 とても心地よかったです。
 
 おかげで、
 僕も、トレッキングに、ヨセミテの自然に、
 すっきり、入りいることができました。
 
 
 橋を渡って、ルートに入ると、
 しばらくで、ふたたび、橋を渡ります。
 そこから、登りがスタートです。
 
 ここで、
 トイレと、水の補給を済ませました。
 
 勾配は、どこも、さほどはきつくはなく、
 ペースを守りさえすれば、
 汗もかかず、息も切れず、
 快適に、楽しんで、進むことができました。
 
 いま調べてみると、
 標高は、
 スタート地点が、4,000フィート強(約1,220m)、
 最高地点、ネヴァダ滝の上で、6,000フィート弱(約1,830m)。
 
 このくらいだと、
 普段、「標高6m」のところに住んでいる僕でも、
 歩くだけなら、
 息が切れたりは、しないんですね。
 
 荷物も、ウエストバック一つに、
 携帯、カメラ、雨具、水と、最小限にしたため、
 汗をかくことも無く、
 そして、とても自由でした。
 
  「人生そのものも、
   最小限の持ち物で、いいんだよなぁ ... 」
 と、
 感じ入りました。
 
 
 まず、
 ヴァーナル滝の横を、上がって行きます。


 
 そのときは、風もなかったため、
 水しぶきに濡れることはありませんでしたが、
 
 風量・風向しだいでは、
 濡れながらの、登坂になるようで、
 
 このルートには、
  " Mist Trail " (霧道)
 という名称が、付けられています。
 
 それだけ間近に、滝を仰ぎながらの、
 登坂になります。
 
 途中には、
 岩の割れ目を進むような、
 小型の「斎場御嶽」のような箇所も、ありました。



 
 登り切ると、
 滝口の、すぐ間近まで、迫ることができます。


 
 轟音をあげて落ちる水の、
 力強さを、身体の中心で、感じました。


 
 このころには、
 岩肌の上方部には、
 朝日が射してきていました。


 
 今日も、変わらず、好天であることを、
 改めて、認識しました。
 
 
 続いて、道は、
 川沿いを、しばらく平坦に進み、
 そして、開けた場所を、ゆったりと、登って行きます。
 
 その後、平坦になり、樹々に覆われ、
 また、登り、また、開け ...
 
 そんなことを、幾度か繰り返します。
 その間、急な登りは無く、
 徐々に徐々に、上がって行く感じです。
 
 そのうちに、
 樹々の間の先に、
 次なる滝が、見えてきます。


 
 なにか僕には、" Lord of the Rings " を思い出させるような、
 樹の道を通り抜けると、
 すぐに、滝の真横に出ます。



 
 今度は、
 滝までの距離が、若干、離れています。


 
 しかし、
 滝そのものは、先ほどよりも、落差があって、
 「迫力」としては、劣らぬものがありました。


 
 滝の横は、ほぼ、
 その落差分、一気に、登ります。
 
 毎年、大勢の人々が登るルート用に、
 しっかりと、石が組まれた、
 歩きやすい、道でした。



 
 
 登り切ると、
 その先には、やはり、橋がありました。
 
 その上から眺めると、
 川は、すぐそこで、滝へと変貌していました。


 
 右側に回って、
 滝口に近づいてみると、
 
 水が、ものすごい勢いで、
 引力に、引き摺り下ろされていました。
 


 吸い込まれそうな迫力に抗(あらが)い、
 手すりを掴んで、見ていましたが、
 
 高所恐怖症ぎみの僕には、
 正視していることが、辛いほどでした。
 
 
 帰りには、
 さきほどの、水が掛からんばかりの、
 川沿いの " Mist Trail " ではなく、
 
 山側のルート、
  " John Muir Trail " を、歩きました。
 
 こちらからは、
 川・滝まで、距離があったために、
 遠景で、それらを眺めることができ、
 
 また、高い位置から、見晴らしがきくため、
 ヨセミテらしい、岩々をも、
 同時に、眺めることができ、
 
 先ほどとは違った風景を、
 楽しむことができました。



 
 また、
 こちらは、より山道なせいか、
 
 先ほどは、目にすることが無かった、
 花々や、動物たちにも、
 ふれることができました。

個人的に堪らない「オダマキ」が、野生で!
「幸せの青い鳥」ステラーカケス(Steller's Jay)

 もちろん、
 最後のは、「野生」ではなく、
 自力で登れない人を運ぶための、
 使役馬です。
 
 
 結局、好天に恵まれたおかげもあり、
 順調に、そして、楽しく、
 トレッキングを終えることができました。
 
 「その、一部」ではありましたが、
 ヨセミテを、しっかりと、身体全体で、
 味わうことができました。
 
 ルートそのものは、
 4時間で、歩くことができ、
 
 ロッジに戻ったときには、
 裕子さんや、こどもたちは、
 まだ、朝食をエンジョイしているところでした。
 
 
 その後、みなが、川遊びに出かけている間、
 一人、休憩を取り、荷物積みをし、
 
 戻ってくると、早々に、チェックアウトを済ませ、
 昼食をとり、
 
 みな、名残惜しくも、
 大満足で、
 ヨセミテを、後にしました。
 
 最後、バレーを離れる前には、
 ヨセミテ滝を、
 滝壺近くから、仰ぎ見ました。


 
 間近からは、
 上段、中段は、見ることができず、
 そして、
 やはり、水量が少なかったこともあり、
 
 午前中に目にした滝と、比較してしまい、
 少々、残念な気持ちも、湧きました。
 
  「なんとも、贅沢な ... 」
 北米一の落差を誇る滝を、目の前に、
 そんなことを思う自分を、笑ってしまいました ^^ 。
 
 
 さあ、
 これから、午後一杯、夜まで、
 たっぷりと、時間をかけて、
 
 カリフォルニア州の北端まで、
 車で、駆け上がって行きます。
 
 そこには、
 今回の旅の、一番の目的である、
 
 荘厳な霊峰が、
 そびえているはずです。