2016年8月10日水曜日

2016アメリカ旅行4 ルート66


 末娘が産まれたとき、
 息子が、ことさら、気に入って、
 繰り返し、繰り返し、繰り返し、
 観ていたDVDがあります。
 
 娘が、産まれ出た瞬間にも、
 このDVDが、流れていました。
 
 ディズニー・ピクサーの、
  カーズ(Cars)
 という、アニメ映画です。

 
 「人間」というものは、
 出てこなくて、
 
 車そのものが、「生き物」として、描写されている、
 「『車』の世界」の、物語です。
 
 主人公は、
 とても優秀な、若いレーシングカーなのですが、
 
 その彼が、
 
  「自分が、走っているのだ」
  「結果が良いのは、自分が凄いからだ」
 という認識から、
 
  「皆に支えられて、走れているのだ」
  「仲間あっての、人生だ」
 という認識への、
 
 いわゆる、
 『人間性』^^ の成長を、
 「縦軸」にしつつ、
 
 かつて栄えた、街道沿いの町が、
 新たなハイウェイの開通により、寂れていく、
 その、さびしさ・切なさを、
 「横軸」とした、
 映画になっています。
 
 『車』同士の繋がりの温かさが、爽やかに描かれていたり、
 とてもきれいな光景が出てきたりして、
 息子のみならず、
 家族みな、お気に入りの映画となっています。

 
 さて、その映画における「横軸」、
 そこには、明確な実在の「モデル」があって、
 
 それが、
  「ルート66( Route 66 )」
 です。
 
 イリノイ州シカゴを起点として、
 カリフォルニア州ロサンゼルス(サンタモニカ)までを結んだ、
 この、国道は、
 
 かつて、アメリカ西部の発展を促進した、
 とても重要な道路であったとともに、
 
 アメリカの、ポップ・カルチャーの題材にされてきた、
 とても存在感のある、道でした。
 
 日本でも、
 ナット・キング・コールの歌として知られる
 「ルート66 "(Get Your Kicks On) Route 66" 」
 は、
 
 まさしく、この道路をモデルとしています。
 
 
 さて、
 正直に言って、
 
 わたしたちは、
 この、「ルート66」に、
 そこまで、強い思い入れがある、というわけではない、
 
 と、思っていました。
 
 ところが、実際、
 当地を、訪れる直前になると、
 
 末娘が、
 人間として、地上に現れるときに、
 この、「ルート66」に関わる音声を、
 BGMに聞きながら、出てきた、
 という経緯があるからなのか、
 
 思いのほか、
 その道路を、走ってみたい気持ちが、
 強く、湧いてきました。
 
 カーズ以外にも、
 まったく同じ「横軸」を持った映画、
 
  「バグダッド・カフェ(Bagdad Café)」
 も、観ていたこともあり、
 
 かつての、「ルート66」、
 現在では、
  " Historic Route 66 "
 と呼ばれる、
 廃れてしまったといわれる道が、
 実際のところ、どんな状態なのか、
 見てみたい気持ちが、強まってきました。
 
 また、
 日本から、
 サンタモニカにほど近い、ロサンゼルス空港に入り、
 そこで、レンタカーを借り、
 
 そこから、
 陸路、アリゾナ州セドナに向かうという、
 今回のルートにおいては、
 
 サンタモニカから、フラッグスタッフという、
 ほぼ、全区間において、
 
 まさに、
  「ルート66」、
 が、通っていて、
 
 そしてまた、そのほとんどの区間では、
 それを廃れさせた、
  「州間高速道路40号線( I-40 : Interstate Highway 40 )」
 が、
 並走していました。

 
 そんなルートを通る、ということに、
 なにか、「縁」のようなものも、感じて、
 
 実際の走行距離は、わずか、数マイルでしたが、
 この、ルート66を、走ってみました。


 
 
 カリフォルニア州ニューベリースプリングスという場所で、
 
 先ほど触れた、
 バグダッド・カフェを訪れる経路で、
 ルート66を、走りました。
 
 映画そのままに、
 その店は、実在していました。


 
 そして、その映画そのままに、
 その店の前を通る、ルート66は、
 車もまばらで、閑散としていました。


 
 店のすぐ後ろを走る、高速道路I-40は、
 これまた、映画そのままに、
 ひっきりなしに、車やトラックが行き交っていて、
 
 その光景そのものは、
 なにか、寂しく、侘(わび)しく感じられました。
 
 ですが、実際に、
 旧道ルート66を走り、


 
 そのうえで、
 I-40を走ると、


 
 片側1車線で、
 路面の痛みが激しい、旧道に対して、
 
 片側2〜3車線、
 制限速度も、時速70〜75マイル(110〜120キロ)、
 
 そして、なにより、
 滑らかな路面が、とても快適な、新道I-40を走っていると、
 
 誰もが、こちらを通ることが、極めて自然であり、
 その「流れ」そのものは、仕方のないことだと、
 こころから、納得しました。
 
 特別の用事がない限り、
 Historic Route 66 を通ることがないことは、
 必然だと、感じられました。


 そんな、
 「盛者必衰」ではないけれども、
 
 「物質世界」の理(ことわり)のようなものへの、
 寂しさも感じつつ、
 
 しかし、
  「これぞ、アメリカ」
 ともいえるような、
 雄大な荒野の中を、一直線に伸びる道を、
 
 何時間にも渡って(この日は、5時間ほど)、
 延々と、進み続けるという、
 とても「らしい」体験に、
 
 飽くことなく、テンションを上げ続け、
 そして、それゆえか、
 徐々に、体調を回復していくことができました。